旧南林邸(設計:安藤忠雄)

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旧南林邸外観

概要                         竣工:1984年9月
建物構造:鉄筋コンクリート造(壁式構造)
敷地面積:237.5平米
建物面積:163.35平米              所在:奈良県生駒市                ※交通:近畿日本鉄道生駒駅より徒歩15分
各階専有面積 1階と3階の賃貸者募集
1階:65.35㎡+コート約43.56㎡            2階:49.00㎡+テラス約16.33㎡
3階:32.67+テラス約16.33㎡
備考                       ・定期借家契約(期間:3年間/再契約:相談可)/店舗など不特定多数の人の出入りのある業種は利用不可ですが、予約制など一部の業種は相談可/保証会社加入必須/要火災保険契約
・賃料その他のご質問については、下記へお問合せください。(info@hhtrust.jp 一般社団法人住宅遺産トラスト)

旧南林邸について

奈良県に位置する、当時の施主夫婦とその家族合わせて3世帯のために設計された住宅。3階それぞれ住宅機能が独立していながら、野外空間を共有のものとした家族のための贅沢な共同住宅である。門から入り階段を登って中庭に達することができる。奥の階段を再び降りたところに地階の玄関がある。後の住まい手であったとある女性はこの場所でワークショップを開いており、道路側、北東端の勝手口を重宝していたという。地階北西端にも勝手口が配置されており、回遊できるつくり、そして風の通り道を生んでいる。地階上の2階、3階にもそれぞれ異なるテラスを備えており、中庭との連動も相まってそれぞれの階に多様な表情がある。

修繕主より
次の所有者を募っていた旧南林邸。ご縁あり、初めて私がその場に足を踏み入れた時の印象は「見放された建築」というものでした。外部、内部ともにコンクリートは汚れ果て、部屋にはものが散乱し、各所に痛みが進み、建築に対して専門的な知識を持たない私が、この建築復旧の活動を進めていけるのかどうか不安を抱いたものでした。しかしそんな不安以上に、この建築が持つポテンシャル、手をかけて復旧することができれば、きっとその場にいる者の心を豊かにしていくであろうイメージを膨らませると、当時の私はワクワクが止まらなかったことを覚えています。
 一見単純な比率のコンクリートの箱が持つ底知れない魅力は、修繕活動を始めてから10ヶ月の月日を重ね徐々に浮かび上がってきました。単純な形、それは純粋な形と呼ぶべきものだったのかもしれません。
 安藤忠雄建築研究所、インテリアデザイナー高橋真之氏、そして住宅遺産トラストのご協力を経て、建築家の当時の設計思想を汲み取りながら現代的な視点を備えたインフラ機能を整えていくために施策を積み重ねてきました。古い建築の修繕において大切なコンセプトの1つとして据えていた「元々そうだったように/from the beginning」という修繕イメージを実現して下さる技術力を持つ専門業者様との出会いがあり、その上で初めて実現できた復旧活動であったと思います。
 施工の過程においては、修繕が必要な箇所が次から次へと出てくる状況でした。コンクリートも鉄も木材も、どの素材も長い年月をかけて劣化しており、修繕に適した方法を用いなければ素材が正しく復旧しない性質を目の当たりにし、建築が生き物であるという世界観、そして古い建築修繕の難しさ、今後の保全活動の難しさについて身をもって多くの学びがありました。
 外郭、骨にあたるコンクリートも構造もどうやら相当長生きしそうだということが分かっていく中で、修繕にあたり最も頭を悩ませたのは換気機能や排水機能などのインフラに直結する部分をどのように修繕するかという問題でした。一部を除いて、オリジナルの意匠をできるだけ残しながらの修繕を目指すこと条件を掲げた場合、専門的な知識と技術力を持つ工務店やメーカーでも施工の難しい換気扇交換、浴室排水トラップ交換など、内蔵や血管にあたるような部分を修繕する難しさに直面していました。問題に直面する度に業者様のリサーチを繰り返し、ようやく出会えた職人の皆様による挑戦的な施工があり、解決できた施工内容も多くありました。
 建築家の当時の設計思想を慎重に汲み取りながら、現代生活に必要とされる機能水準を取り戻し、過去の住まい手が足した建て付けの家具は慎重に取り除いていきました。地階についてはキッチンスペースの最小限化をはかることで、今後この建築がより長く生きてくれるよう通気性が更に高まるような内部空間を実現することができました。
 当時3世帯のために設計された共同住宅のうち、この度2戸の住宅(SOHO)をそれぞれ活用して下さる住まい手を募集致します。異なる個性を持つそれぞれのフロアを体感頂き、豊かに活用して下さる方とのご縁が持てましたら幸いです。人々がこの美しい空間を活用し始め、時間をかけて少しずつこの建築が「見放されることのない建築」として再び育っていくことを願っています。

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