朝井閑右衛門アトリエ
※2022年4月 継承されました
朝井閑右衛門アトリエ
所在: 神奈川県鎌倉市
竣工: 昭和37年(1962年)
構造: 木造瓦葺2階建
延床面積: 103.69㎡(31.4坪)
敷地面積: 668.79㎡(約202.3坪)


鎌倉・由比ガ浜に近い閑静な一画、雑木の奥に、洋画家・朝井閑右衛門のアトリエが佇んでいる。薔薇や道化のモチーフで知られたこの画家は、昭和41年(1966年)、「ご隠居さん」の為に建てられたという日本家屋を購入し、横須賀の田浦から鎌倉へ転居。昭和58年(1983年)、その生涯を閉じるまで、この家の普請を道楽とし、画業を全うした。
友人で詩人の草野心平は、追悼の辞に「この家も、庭も、一木一草に到るまで、閑右衛門の仕事である。永く残すように」との言葉を添えた。そのとおり、閑右衛門の家は、現在もご遺族により、閑右衛門が収集した家具や絵のモチーフとなった品々、絵筆やイーゼル、庭木に到るまで、当時のしつらえを残し、在りし日の姿を伝えている。


◆ 朝井閑右衛門(あさい・かんえもん)

明治34年(1901年)大阪府生まれ。大正15年(1926年)第13回二科展で「廃園に於いて」にて初入選。油彩の厚塗りで強烈な個性を発揮し独自の世界を築いた。長く第一線で活躍しながら、生前は、画集も展覧会も拒否し、特異な生涯を貫いた。昭和58年(1983年)没。享年82。代表作「丘の上」(1936年)は神奈川県立近代美術館所蔵、横須賀市立美術館に「朝井閑右衛門記念室」がある。

朝井閑右衛門アトリエ

印象的な画室(アトリエ)は、物置にしていたガレージを母屋とつなぎ、電信柱程ある檜の丸柱をとおして梁とし、一本の支えもない大胆な1室としている。北側の大きな開口部が1年を通じて室内に安定的な柔らかい光を保つ。
アトリエには、お気に入りの品々が集められた。腰掛ける等身大のモデル人形は洋画家・岡田三郎助から、マントルピースの天板の大理石は、彫刻家・舟越保武から譲り受けたという。

朝井閑右衛門アトリエ

「囲炉裏のある和室は、茶室風に水屋を作り、炉を切り、平板や躙口を設けて、床の柱や水屋の天井などに凝った材料を使った。この大工は那須さんのお世話によるもので、那須良輔宅、里見弴宅、小林秀雄宅などを手掛けた名大工であった。老体をひっさげて見事な仕事をした。閑先生は注文がむずかしいが、彼もなかなか自説を曲げない。時に喧嘩もした。用材については、一緒にタクシーで銘木屋へ出かけて、あれこれとたくさん高価な材木を選んで使っている。」(門倉文枝「朝井閑右衛門 思い出すことなど」より)