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鵠沼の家
2024年2月 継承されました。
  • 所在
    神奈川県藤沢市
  • 竣工
    1975年4月
  • 設計
    清家清+デザインシステム
  • 構造
    木造2階建
  • 施工
    森田工務店
  • 建築面積
    118㎡
  • 延床面積
    131.18㎡(1階 93.92㎡ / 2階 37.26㎡)
  • 敷地面積
    580.69㎡
  • 竣工時の用途
    住宅
鵠沼の家
photos: 秋山実

小田急線鵠沼海岸駅からほど近い角地に建つこの家の周辺は、明治中期からの別荘地らしい閑静な雰囲気を継承している。明治期、江の島に近いこの地を天皇の御用邸にと期待して20万坪以上の土地を取得していた大給子爵が、御用邸が葉山に決まってしまったのち、海浜の別荘地として開発した。海岸まで500m、国道134号線を越せばサーフ天国、その先には江の島を望み、防砂風林を抜ける風も心地よい。
弁護士の夫と陶芸を趣味とする妻というシンプルな家族構成に対し、1階に3部屋の続き間、2階に主寝室と納戸というシンプルな構成はまさに清家清の真骨頂である。
南側に、客用トイレと納戸があるゆったりとした玄関ホール、客間(10畳分の板の間)、居間(10畳)、食堂(12.5畳分の板の間)と続き、食堂の北側にキッチン、水回り、陶芸室が並び、陶芸室の一部は食堂脇から南側の庭に通ずる。
客間と居間の前の縁側から明るく広い庭を眺めていると、どこまでが敷地なのか分からない森が背景となっていて、マイ“御用邸”の気分を味わえる。50年近く経ているにもかかわらず、全くと言っていいほど当初のままであることにも、時の経過を大切にする“御用邸”感がある。
竹田教授の家(1952年)に始まり、島澤先生の家(1962年)、千鳥町の家(1973年)、松庵の家(1978年)など清家清の一連の大屋根の家の中でも、特に傑出した作品であり、“原則として建設後50年を経過”とする登録有形文化財の候補にあと一歩と言える。

八木幸二(建築家)


photos: 秋山実

鵠沼について

鵠沼松が岡、鵠沼海岸周辺は、明治半ば頃から別荘地となったエリアで、東家旅館を中心に、芥川龍之介ほか文士芸術家が集い、政財界の方々が別荘を構えるなどしました。一面の砂丘を別荘地にするにあたり、購入者に防砂防風の黒松の植樹が勧められ、また、江ノ電の敷設なども進み、真白き富士の峰、緑の江の島の風光明媚を背景に、「砂地に松原」の別荘地が出来ました。
大正後期から昭和初期には、今で言う「リゾート通勤」でしょうか、都心まで一時間少々の地の利から、次第に定住の地へ変化し始めます。戦後は、外車ショーが行われ、アメリカナイズされた雰囲気もあり、サーフィン、ユースカルチャーの地としても名を馳せました。
昨今のミニ開発などにより、お屋敷が分譲され、「鬱蒼とした庭」「玉石積みに建仁寺垣」などの原風景が、急速に失われつつある中、清家清先生設計の「鵠沼の家(大屋根の家)」がここに在り続け、文化が継承されて行く事は、大変意義深いと存じます。

原風景を生かすまちづくりの会 前田忠厚


photos: 秋山実

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