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三角箱(柴永ロッジ)
  • 所在
    群馬県桐生市川内町
  • 竣工
    1972年
  • 設計
    宮脇檀
  • 構造
    木造2階建
  • 施工
    坂上工業
  • 延床面積
    52.28㎡
  • 敷地面積
    504.58㎡
  • 竣工時の用途
    別荘
  • 備考
    *延床・敷地面積ともに、書籍表記による
三角箱(柴永ロッジ)
photo: Takeshi Kirihara / Manabu Synbori
三角箱(柴永ロッジ)について


透視図:宮脇檀建築研究室

川内町5丁目、名久木の山間に風変りな山荘がある。「三角箱」と呼ばれる柴永ロッジだ。その名前通り、立方体を対角線上に切り取った形体をしている。屋根と外観は単一の杉板が張り巡らされている。外観からは想像しがたい3階建て。

設計者は宮脇檀。宮脇は東京芸大建築科を卒業後、東京大学大学院に進み、昭和39年(1964)に宮脇檀建築研究室を開設する。院生時代、設計料で買ったクルマで日本を一周し、各地の集落を訪れる。その経験から、風景を含めた住宅を意識するようになった。また、宮脇の著作は数十冊に及ぶ。

ロッジのオーナーである柴永文夫は武蔵野美術学校在学中の1960年(安保の年)に日本宣伝美術協会賞の特賞を受賞している。この受賞を機に大学を中退し、日本デザインセンターに入り活躍する。7年間席を置いた後、昭和43年(1968)、動乱の時代のヨーロッパ、アメリカ、メキシコを周遊し、フリーのグラフィックデザイナーとして独立する。数々の装丁を手がけたが、代表的なものとしては、山川出版の世界史の教科書や週刊朝日百科「日本の歴史」「世界の文学」、国立民俗学博物館刊行の「月刊みんぱく」「季刊民俗学」などがある。柴永は、それらの仕事の中で世界を周遊した際に自ら撮影した写真を利用することもあった。

柴永が長くつきあった仕事の一つに『暮らしの設計』(中央公論社)がある。そこで注目されていた建築家・宮脇檀にロッジの設計を依頼した。宮脇はいつもベストをつくす人だったからである。昭和47年(1972)、文夫の妻綾子が舞台俳優だった縁もあり、桐生出身の俳優、金井進二の故郷、名久木に宮脇が設計した三角箱が建設された。別荘内部の巨大な壁には柴永がすべての費用をもって招待した、ポーランドの画家で友人、ガーベル・レホヴィッチの絵が描かれている。また、ガーベルと歌人・宮柊二の詩画集「’73東京幻想」は、柴永が装丁している。

柴永文夫という触媒により、さまざまな文脈が名久木の三角箱に結実される。当時、幾何形体だった三角箱は景色の中で主張するように存在していたが、40年以上の歳月を経て、名久木の里に溶け込む。柴永の遺言には「元の風景に帰してあげてください」とあり、その岐路に佇む。

(桐生商工会議所 FT桐生 わがまち風景賞2014 より:赤池孝彦)
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